志望校の決め方について

Q@、SAPIXに通う受験生を持つ母親です。志望校の決め方について教えてください。 合不合の偏差値は4科で49。それでも息子は早稲田中学を受けるつもりでいます。親としてはもう少し可能性のある学校を受けさせたいと考えていますが、本人が聞き入れません。どうしたものでしょうか。(小6 男子 母より)

QA、説明会や文化祭で様々な学校を見ましたが、親子で気に入った学校が違います。娘は「雰囲気がよい」という理由で、現時点で合格しそうな学校(偏差値45〜49)を希望で、親は説明会の話で「大学受験の指導体制がよい」と感じた学校に行かせたいと考えています。しかし、この学校は偏差値55〜59で、かなり頑張っても難しい状況です。親は、娘がまだ必死にやっていないと感じていて、「まだ伸びるのでは」と思います。どうしたものでしょうか。(小6 女子 母より)


A、毎年11月は志望校の相談をたくさんいただく。志望校選びは、我々にとっても難しい問題である。
それは、家庭によって価値観が違うからだ。「社会経験のある親が決めるべき」と言われればそれはそうだし、「本人の人生だから本人に任せるべき」となれば、それもいえる。志望校選びでは、もう30年近く前のことだが今でも忘れられない話がある。

私の塾仲間のY君は、慶應中等部と日大付属校に合格した。一般的には、慶應を選ぶ人がほとんどだと思うが、彼は日大付属校に入学した。以下は、その時のやり取りである。
父「○○(友人の名前)、オマエ将来何になりたいんだ」 
子「歯医者になりたい」
父「そうか。慶應に歯学部がないが、日大にはある。どうする?」
子「日大に行く」
父「わかった」

隣でお母さまが発狂していたそうだ。でも、結局彼は日大付属校に入学した。
それから6年後、彼は浪人して私と一緒に駿台予備校に通った。そして、皮肉にも慶應法学部に入学した。浪人時代、彼の口からは歯医者の「ハ」の字も出ていない。そのかわり「最低、慶應には合格したい」とは言っていたが・・・。いずれにしても、彼は今でも酒の席でしばしば中学受験の話をし、その時の父親を自慢する。
さて、そんな話もあるのだが個人的な考えを記してみたい。上記のエピソードと矛盾するが、中学受験においては、志望校は「親が決めたほうがいい」と思う。
そもそも中学受験をするのは親の考えであることが多いし、親のほうが社会経験があり、判断能力もある、そういう単純な理由からである。どんなに前向きに頑張っている子でも、小学生で人生における中学受験の意味や位置づけを理解している子は少ない。高校生くらいになれば、子どもなりに様々な経験をして、客観的な判断ができるだろうが、小学生には難しい。ただし、本人の納得も必要だから、妥協案は必要だろう。日程的にどっちも受けられるならそれもいい。一月校に合格したらチャレンジしてもいいし、受験機会が複数あれば2回目は受けてみてもいいだろう。いずれにしても、子どもと腹を割って話したらいいと思う。

「校風が合う、合わない」という点は、6年も通うのだから重要な問題である。しかし、あまりこだわるのもどうかと思う。そもそも校風は生徒と先生がつくるものであるから、結局、入学後でないと分からないものである。学校説明会で「校風が気に入った」という話もあるが、学校説明会は受験生にとっては学校を知るためのものだが、学校側からすれば営業活動の場である。学校側が営業活動に熱心かどうかによって印象はずいぶん変わってしまうものなのだ。入学後、誰が担任になるか分からないし、隣の席に誰が座るかも分からない。 それに、どんなにこだわって志望校を選んで入学しても、多感な思春期の数年間には、必ず学校や教師に幻滅する瞬間があり、友人関係の問題も起こる。過度な期待は幻滅の度合いも高める。だから余計な期待はせず、学校は同じレベルの生徒を拘束して、勉強を教える施設に過ぎないと割り切って考え、結果として人間関係や社会生活の基本を学べることもある、というくらいのほうがいいと思う。また、学校選びに熱心な程、第1志望に合格できなかった場合の親の落胆は大きい。それをみて、子供は入学する学校に最初から幻滅してしまうことがある。そうなると、折角の学校生活をつまらなくしてしまう。
そう考えてみると、「場所」「偏差値」「時間割」「付属大学の有無」「部活動」などで、志望校を選んだほうが失敗は少ない。曖昧なイメージより、明確なことで決めたほうが、期待は裏切られないものだ。
なんだか、夢のない話になってしまったが、今までたくさんの子たちを見
ての実感だからお許し願いたい。 いずれにしても、思春期の数年間で子どもは別人のように成長するものだし、学校の雰囲気が合わないほうがかえってその子の可能性を開花させることもある。子どもの可能性を信じて、前向きに入学させることが一番なのである。